タイマICとコンパレータによるPWM制御パワーパック
はじめに
パワーパックの自作では定番の,タイマIC 555とコンパレータを使用したPWM制御パワーパックの製作事例を紹介します. PWM制御方式を採用することにより,列車が停車中も室内灯,ヘッドライトおよびテールライトの点灯状態を維持可能な,常点灯機能を実現可能です. また,一般的なトランジスタを用いたパワーパックよりも,安定した低速運転が可能になります.
このパワーパックは,プログラミングが必要なマイコンを使用しないため,初めてパワーパックを自作してみようという方にもおすすめです. 比較的簡単な回路構成で外観もシンプルですが,市販の入門者向けパワーパックよりも安価で高性能だと思います.
参考文献
私が回路を製作するにあたって参考にしたWebページは,「ベンチテスト用モータスピコンの製作」です. 回路の動作説明もわかりやすいため,興味がある方はご一読ください.
- 参考文献: ベンチテスト用モータスピコンの製作;i>
上記文献を参考にするにあたって,回路構成と部品の一部を変更しています. 主な変更点は3点です. 1点目は,保護回路としてポリスイッチ(PTC1)を追加していることです. 2点目は,PWM信号の周波数を約5kHzから約22kHzに変更していることです. 周波数を可聴域の上限(約20kHz)以上にしているため,モータから励磁音が聴こえなくなり,大変静かになります. 最後の3点目は,常点灯調整用の可変抵抗(VR1)を追加していることです. これにより,室内灯などの点灯状態を維持したまま,簡単に列車を停止させることが可能となります.
回路
回路図
大きな画像で字が細かくなりましたので,回路図はPDFファイルで公開します. ブラウザで閲覧するか,ダウンロードしてAdobe ReaderなどのPDFビューアでご覧ください.
使用部品
下表に使用部品の一覧を示します.参考単価をクリックすると,秋月電子通商,共立エレショップまたはマルツパーツ館のページに飛びます.
私の手元にあった部品で実装することを前提に回路を設計したため,現在では電子部品店で入手しづらい部品もあるかと思います. 参考単価欄に「互換品」と記載されているリンクをクリックすると,互換性があると考えられる部品のページに飛びます. ただし,私が互換性および動作を確認したわけではありませんので,ご注意ください.
CN2はフィーダ接続用端子です. ご使用の線路に合わせて,端子は適宜変更してください.
番号 | 部品名 | 型番 | 数量 | 参考価格 |
---|---|---|---|---|
CN1 | コネクタ | 各社 DCジャック φ2.1 パネル取付用 | 1 | 60円 |
CN2 | RCAジャック | 各社 RCAジャック 黒 | 1 | 40円 (互換品) |
SW1 | トグルスイッチ | 各社 1回路1接点 | 1 | 143円 |
SW2 | トグルスイッチ | 各社 2回路2接点 | 1 | 90円 (互換品) |
PTC1 | ポリスイッチ | 各社 ポリスイッチ 500mA (1Aを超過すると遮断される) |
1 | 30円 |
C1 | 電解コンデンサ | 各社 25V 47µF | 1 | 10円 |
C2, C5 | 積層セラミック コンデンサ |
村田製作所 50V 0.1µF | 2 | 10円 |
C3, C4 | 積層セラミック コンデンサ |
各社 50V 0.01µF | 2 | 10円 |
R1 | 炭素皮膜抵抗 | 各社 1/4W 2kΩ | 1 | 1円 |
R2, R3 | 炭素皮膜抵抗 | 各社 1/4W 2.2kΩ | 2 | 1円 |
R4 | 炭素皮膜抵抗 | 各社 1/4W 1kΩ | 1 | 1円 |
R5 | 炭素皮膜抵抗 | 各社 1/4W 100kΩ | 1 | 1円 |
VR1, VR2 | 可変抵抗 | 各社 5kΩ B | 2 | 87円 |
LED1 | LED | 各社 φ3 赤色 | 1 | 10円 |
D1 | 一般整流ダイオード | 各社 1N4004 | 1 | 10円 |
D2 | ファストリカバリ ダイオード |
PANJIT ER504 | 1 | 35円 |
Q1 | FET | 日立 2SK3142 | 1 | 100円 (互換品) |
U1 | タイマIC | Texas Instruments TLC555CP | 1 | 30円 (互換品) |
U2 | コンパレータ | STMicroelectronics LM2903N | 1 | 20円 (互換品) |
基板 | 片面ガラス ユニバーサル基板 Cタイプ | 1 | 60円 | |
ICソケット | 各社 丸ピン DIP 8ピン | 2 | 15円 | |
ピンヘッダ | 各社 L型 1列40ピン | 1 | 50円 | |
QIコネクタ | 各社 QIコネクタ コンタクト | 8 | 10円 | |
QIコネクタ | 各社 QIコネクタ 2P | 1 | 16円 | |
QIコネクタ | 各社 QIコネクタ 3P | 2 | 21円 | |
XAコネクタ | JST XAコネクタ ベース付ポスト トップ型 2P | 2 | 36円 | |
XAコネクタ | JST XAコネクタ コンタクト | 4 | 22円 | |
XAコネクタ | JST XAコネクタ ハウジング 2P | 2 | 26円 | |
ツマミ | LEX CM-15S | 1 | 156円 | |
ツマミ | LEX B-15-6-BK | 1 | 200円 | |
ケース | タカチ電機工業 SW-85B | 1 | 170円 | |
その他 | 配線,ネジ,ナット,ゴム足 | 適量 | ||
その他 | ACアダプタ DC12V センタープラス | 1 | 900円 |
回路製作
今回製作する回路では,秋月電子通商の片面ガラス ユニバーサル基板 Cタイプを用いました. 下図に実体配線図を示します. 下図(上)が表面,下図(下)が裏面です. 赤色線が表面を通る配線(ジャンパ線),青色線が裏面配線を示しています.
回路製作中の写真は撮り忘れていたのでありません.下図は完成した基板を,ケースの蓋に固定した際の写真です.
配線する前に,必要な場合は基板を加工します. 今回は基板はカットしませんでした. しかし,ER504(D2)の足が太くて穴に入らないため,取り付け位置の穴をφ1.5のドリルで広げておきました.
上図のとおりに配線する場合,ICソケットの下を通るジャンパ線がありますので,これを最初にハンダ付けしてください. その後,ICソケットやピンヘッダなどの目印になる部品をハンダ付けしてから, 背の低い部品から背の高い部品,熱に強い部品(抵抗など)から熱に弱い部品(コンデンサやFETなど)という順番で実装していきます.
ケース内部でトグルスイッチや可変抵抗と基板上の部品が干渉しないよう, L型のピンヘッダを使い,ポリスイッチ(PTC1)と電解コンデンサ(C1)は寝かせてハンダ付けしています.
ケース加工
次に,ケースに部品の取り付け穴を開けます. DCジャック(CN1),電源スイッチ(SW1),常点灯調整用の可変抵抗(VR1),速度調整用の可変抵抗(VR2), 方向切換スイッチ(SW2)およびフィーダ接続用端子(CN2)の穴が必要になります. LEDは,穴に挿入した後,瞬間接着剤で固定しました.
またもや撮り忘れたので加工中の写真はありません…. 私は,下記のようなACドリルドライバで加工しました.
取り付け / 配線
下図は配線後の写真です. 今回はケースの蓋に穴を開け,ネジとナットで基板を固定しています. 蓋と基板の間には,スペーサの代用としてナットが挿入されています. 最後に,トグルスイッチや可変抵抗のコネクタを基板に接続し,蓋を閉じれば完成です.
完成
PWM制御方式の採用で常点灯対応となり,安定した低速運転が可能となりました. 後日,デモ動画をアップロードできればと思います.
運転する際は,初めに右側面の常点灯調整用のツマミを列車が走り出すまで回した後, 室内灯,ヘッドライトやテールライトが点灯状態のまま列車が停止するまで反対側に回します. 後は,上面の速度調整用のツマミのみで速度を制御します.
KATOの線路でこのパワーパックを使用する場合は,下図のようなケーブルを自作してください.
更新履歴
日付 | 内容 |
---|---|
2015/05/05 | 可変抵抗(5kΩ B)の数量を修正(正: 2,誤: 1) |
2014/06/01 | 公開開始 |